アントレプレナーシップ教育Education

アントレプレナーシップ教育とは

自らが置かれた環境の中で課題を発見し、解決するため主体的に行動を起こす
山形大学アントレプレナーシップ教育研究センターでは、アントレプレナーシップを「起業家だけに求められる特別な資質」ではなく、変化の時代を生きるすべての人に必要な行動能力と捉えています。

アントレプレナーシップという言葉を耳にする機会が増えています。新規事業の立ち上げや社内変革の文脈で語られることが多いものの、正確な意味を問われると答えに迷う人も多いのではないでしょうか。

アントレプレナーシップは、起業家だけに求められる特別な資質ではありません。変化の激しい社会環境において、新たな価値を創出し、学問・研究や事業を推進していくすべての人々に必要な能力としていま改めて注目されています。

本記事では、アントレプレナーシップの意味や定義を整理したうえで、学問・研究や起業経営において求められる背景、チームや組織に根づかせるための教育・育成の考え方について解説します。学生から企業の人事・採用担当者、経営層まで幅広い方を対象に、人材戦略を考えるうえでの参考としてご活用ください。

アントレプレナーシップとは、
様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず
自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神です。

多くの仕事がAIやロボットに置き換わっていく社会において、
どのように生きるかを考え、実行する力を習得することがこれまで以上に必要になってきています。

アントレプレナーシップ教育は、自ら社会課題を見つけ、
課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探究したりすることができる知識・能力・態度を身に付ける教育であり、
起業家を育成するためだけのビジネス教育とは異なります。

文部科学省 アントレプレナーシップ人材育成プログラム運営事務局

アントレプレナーシップとは——定義と本来の意味

アントレプレナーシップ(Entrepreneurship)は、日本語では起業家精神と訳されることが一般的です。しかし、アントレプレナーシップの概念は、単なる起業意欲にとどまりません。

起業家だけのものではない——ビジネスパーソン全般に広がる概念

アントレプレナーシップは、スタートアップの創業者や独立起業家だけに求められるものではありません。企業内で新事業を立ち上げるプロジェクトリーダー、既存事業の変革を推進するマネージャー、あるいは業務改善に主体的に取り組む現場社員にも、同様のマインドセットとスキルセットが求められます。

企業内でアントレプレナーシップを発揮する人材はイントレプレナー(企業内起業家)と呼ばれ、その育成は多くの企業にとって重要な経営課題となっています。新規事業の創出だけでなく、既存事業の競争力強化においても、自ら課題を発見し、解決策を構想・実行できる人材の存在が不可欠だからです。

アントレプレナーシップを構成する主要な能力要素

アントレプレナーシップを発揮するためには、特定のマインドセットとスキルセットが必要です。マインドセットとスキルセットは一人ですべてを備える必要はなく、チームとして補完し合うことでも機能します。

当センターではアントレプレナーシップを構成する構成する主要な能力要素を以下のように定義し、各プログラムで育成を図っています。

  • 誠実さ
  • 主体性
  • 相互理解力と機会活用力
  • 自己効力感
  • 意欲と忍耐
  • 相手に何かを言う際の配慮・思いやり
  • 相手の言うことを聞く際の配慮・思いやり
  • 交流・ネットワーキング

なぜアントレプレナーシップ教育が重要なのか

アントレプレナーシップの能力要素を見ると、生まれ持った才能が必要なのではないかと感じる方がいるかもしれません。しかし、研究と実践の両面から、アントレプレナーシップは後天的に習得可能な能力であることが明らかになっています。

先天的な才能ではなく後天的に習得できる力

ドラッカーはイノベーションとアントレプレナーシップの原理と方法は、誰でも学ぶことができると述べています。成功した起業家やイノベーターを分析した研究でも、彼らに共通するのは生まれつきの資質ではなく、機会を発見し行動に移す経験を数多く積んできたという事実でした。

つまり、アントレプレナーシップは才能ではなく技術であり、適切な学習機会と実践経験によって誰もが習得できるものです。この認識は、企業の人材育成戦略を考える上で重要な示唆を与えます。

組織の変革力と新規事業創出力を底上げする

組織的にアントレプレナーシップ教育に取り組むことには、複数の効果が期待できます。

期待できる効果詳細
新規事業の創出力向上課題発見から事業構想、実行までのプロセスを体系的に学んだ人材が増えることで、組織として新たな収益の柱を生み出す確率が向上します
既存事業の競争力強化に寄与アントレプレナーシップを持った人材は、日常業務の中でも改善機会を見出し、主体的に行動します
現場レベルでの継続的な改善が積み重なることで、組織全体の生産性向上につながります
人材の採用競争力と定着率の向上成長機会を求める優秀な人材にとって、アントレプレナーシップを育む環境は魅力的に映ります挑戦を後押しする組織文化は、人材獲得と定着の両面でプラスに働きます

アントレプレナーシップを組織に根づかせる方法

アントレプレナーシップを一部の人材だけでなく、組織全体に浸透させるためには、社内の仕組みづくりと外部リソースの活用を組み合わせることが効果的です。

社内の仕組みづくり——挑戦を促す制度と風土の醸成

まず重要なのは、挑戦を促進する社内制度の整備です。新規事業提案制度やアイデアコンテストの導入、プロジェクト型の人材配置、評価制度における挑戦行動の適切な位置づけなどが具体的な施策として挙げられます。

制度と同時に、心理的安全性の確保も欠かせません。新しいアイデアを提案したり、失敗を経験したりしても、それが不利益につながらない風土があって初めて、社員は積極的に挑戦できるようになります。経営層からのメッセージ発信や、失敗事例を学びとして共有する文化の醸成が求められます。

外部の実践型教育プログラムを活用する意義

社内施策と並行して、外部の教育プログラムを活用することも有効な選択肢です。外部プログラムには、社内だけでは得られない複数のメリットがあります。

一つは、体系化されたカリキュラムで効率的に学べる点です。アントレプレナーシップの理論と実践を、経験豊富な指導者のもとで段階的に習得できます。

もう一つは、異業種・異職種の参加者との交流を通じて視野が広がる点です。自社内では得られない多様な視点や人脈は、新たな事業機会の発見につながることがあります。

さらに、実際に事業を立ち上げた実業家から直接学べる機会は、教科書では得られないリアルな知見をもたらします。成功だけでなく、失敗から何を学んだかという実践知は、受講者自身が行動を起こす際の指針となります。

たとえば、山形大学アントレプレナーシップ教育研究センターが提供するi-HOPEは、各領域の最前線で活躍する実業家が毎回講師として登壇し、約8ヶ月にわたって実践的なプログラムを展開しています。社会人と学生の混合チームでビジネスプランを作成し、地域でのフィールドワークを行うなど、座学にとどまらない実践型の学びが特徴です。

アントレプレナーシップ教育は事業を成長させる

アントレプレナーシップとは、変化の中に機会を見出し、新たな価値を創出するために行動する姿勢と能力です。起業家だけでなく、企業内で新規事業や変革を推進するすべてのビジネスパーソンに求められる資質として、その重要性は高まっています。

アントレプレナーシップは先天的な才能ではなく、学習と実践によって習得できる力です。組織としてアントレプレナーシップ教育に投資することは、新規事業創出力の向上、既存事業の競争力強化、そして優秀な人材の獲得・定着につながります。

変化の激しい時代において、組織の持続的な成長を実現するために、アントレプレナーシップ人材の育成を検討してみてはいかがでしょうか。