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地域の課題は今後起こりうる世界の課題 | 山形大学 i-HOPE | 2023年6月講義レポート

2023年5月、「山形大学人材育成プログラム「i-HOPE 」2023 新事業創出イノベーションプログラム」が始まりました。

本プログラムの目的は
「起業家が歩むプロセスを一通り経験し、イノベーションマインドを身につける」

新事業創出に必要な起業家精神と知識・スキルを学ぶことができる、山形大学とコロンビアビジネススクール公式プログラムVenture for ALLⓇが連携したプログラムです。

昨年開催した様子はこちらをご覧ください。
目指すはスタートアップ企業の創出!山形大学で学ぶアントレプレナーシップ教育 | 山形大学 i-HOPE | 2022年5-10月講義レポート

期間は2023年5月から12月の約8か月間、隔週土曜日開催で講義日は全17回。

6月の講義は
第3回目(6月10日)
「3-1:ビジネス・スプリングボード②価値を確立する」
「3-2, 3:チーム・ワーク③(アイデア創出ワークショップ)」

第4回目(6月24日)
「4-1:マーケティング最前線」
「4-2, 3:トライセクター戦略:企業と行政の連携による新価値創造」

第三回目の講義では、前回に引き続き、ビジネススプリングボードのツールの使い方について学びました。また、フィールドワークに向けての準備を行いました。
第四回目の講義では、ゲスト講師の白根先生より、マーケティングの基本概念の中から、特に必要と思われる市場・消費者行動の分析、仮説設定の方法、事業との整合性判断などを学びました。また、宮城県女川町で震災からの復興事業に携わられ、多くの連携事例を実施された小松先生をお迎えし、トライセクター戦略について講演していただきました。

本記事では、i-HOPE 新事業創出イノベーションプログラムの6月の講義内容についての紹介を行います。こちらの記事は主に下記のような人向けの記事です。

  • 「i-HOPE 新事業創出イノベーションプログラム」の講義内容に興味のある人
  • 「アントレプレナーシップ教育」に興味のある人
  •  新規事業に携わる方、現業で新たな発想を求められる方
  • 「スタートアップ」に興味のある人
  • 「起業」に興味のある人

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目次
1. 講義(2023年6月10日)
 ・「3-1:ビジネス・スプリングボード②価値を確立する」
 ・「3-2, 3:チーム・ワーク③(アイデア創出ワークショップ)」
2. 講義(2023年6月24日)
 ・「4-1:マーケティング最前線」
 ・「4-2, 3:トライセクター戦略:企業と行政の連携による新価値創造」
 ・受講生の声
3. 7月の講義予定
4. まとめ
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1. 講義(2023年6月10日)

・「3-1:ビジネス・スプリングボード②価値を確立する」

講師:廣川 克也(ひろかわ かつや)氏


サービスモデルと収益モデル

廣川氏「ビジネスモデルは、サービスモデルと収益モデルの二つに分解できます。そして、サービスモデルから取り組まないとビジネスは成り立たなくなります」

第二回目の講義2-1に引き続き、ビジネスアイディアの初期ブラッシュアップを行いました。
ビジネスを考えるうえで重要なこと、考えていくべき順序を、私たちの身の回りにあるブランドやサービスを例に教えて頂きました。

価値を見極め、言語化する

廣川氏「価値を見極めて、言語することが重要です。温かい飲み物の価値、冷たい飲み物の価値、常温の飲み物の価値。常温の飲み物の価値は、今の時期でも結露せず鞄の中が濡れない、冷たい飲み物のように飲んだ時に体を冷やしすぎない等がありますが、価値を言語化できていないとただのぬるい飲み物になります」

「解決方法=提供価値」が正しく設定されているか、実現のために必要なリソースや次のアクションは何かなど、事業の基盤となる項目について解説し、議論と検証を行いました。

質疑応答の様子

・「3-2:チーム・ワーク③-1(アイデア創出ワークショップ)」

講師:小野寺 忠司(おのでら ただし)氏
講師:廣川 克也(ひろかわ かつや)氏


ビジネスアイデアを創出するフィールドは「山形県最上地方」

3-2の前半では、小野寺塾長からフィールドワークの主旨、ビジネスアイデアを創出するフィールドについて、最上地区のデータをもとにご説明いただきました。

また、現在最上エリアを対象に活動している、山形県ソーシャルイノベーション創出モデル事業「Yamagata yori-i project」についてもご紹介していただきました。
※Yamagata yori-i projectについてはこちらをご覧ください(https://yori-i.org/)

効率的かつ盛り上がるブレスト / アイディアを出すコツ

3-2の後半では、廣川先生より、ブレストのコツ、グランドルール、アイディアを出すコツ、価値を広げるツールについて、お話していただきました。

・「3-3:チーム・ワーク③-2(アイデア創出ワークショップ)」

講師:菅生 達仁(すがおい たつひと)氏


3-3では、チームに分かれ、3町村の地域課題、資源をテーマにビジネスアイデアを検討。講師、コーディネーターの皆様に、ご指導・ご助言を頂きました。

2. 講義(2023年6月24日)

・「4-1:マーケティング最前線

クリエイティブディレクター・マーケティングコンサルタント
元ジョルダン(株)戦略企画部長
元(公社)日本マーケティング協会 研究開発局長 エグゼクティブコンサルタント
元電通シニアクリエーティブディレクター氏
白根 有一(しらね ゆういち)氏

1979年株式会社電通に入社し、コピーライター・CMプランナーを経てクリエーティブディレクター、シニアクリエーティブディレクターを歴任。

1997年より(株)電通EYE常務取締役エグゼクティブクリエーティブディレクター、2005年より(株)電通東日本取締役コミュニケーションデザイン本部長に着任。その間東京国際大学非常勤講師。成城大学非常勤講師を務める。

2014年(公社)日本マーケティング協会エグゼクティブコンサルタントにて研究開発局長を務める。2021年より、日本マーケティング協会客員研究員(予定)、2021年 ジョルダン㈱ 戦略企画部長に着任。


マーケティングは「一日」あれば学べる、しかし使いこなすには「一生」かかる

「トレンドを追うことがマーケティングではない。ヒトと違う発見ができるかどうか」
「マーケティングに期待される最高の目標は、「課題解決」ではなく、「課題発見」である」と白根先生は言います。

私たちの身の回りにも課題は溢れています。視覚障害者の方の安全かつ快適な移動を支援するための点字ブロックや誰でも簡単に使える会計ソフトなどの開発も、元々は身の回りにある困りごとです。

この講義では、マーケティングの基本概念の中から、特に必要と思われる市場・消費者行動の分析、仮説設定の方法、事業との整合性などを、マーケティングを始めて学ぶ方にも分かりやすく解説して頂きました。

質疑応答の様子

二つの「知」、三つの「視」

起業に必要な要素として、知識と知恵の両面を磨き(二つの「知」)、
視点・視野・視座の獲得(三つの「視」)を心がけることが大切であると教えて頂きました。

自分の周りの環境が世間一般の普通ではないかもしれません。
身近な所にも沢山の情報が溢れています。

知識をベースに知恵を絞り、目を付ける視点や、その視点の守備範囲を広げた視野を持ち、視点と視野を高くした視座を意識してみると
日常の中からも何か新しい気付きを得られることでしょう。

・「4-2, 3:トライセクター戦略:企業と行政の連携による新価値創造」

Venture for Japan 代表
NPO法人アスヘノキボウ 理事
小松 洋介(こまつ ようすけ)氏

2005年に(株)リクルートに入社し、東日本大震災を機に2011年から女川町復興連絡協議 会 戦略室所属。2013年にNPO法人アスヘノキボウを設立し、女川町を拠点に復興まちづくり(主に産業 復興)に従事。2018年より将来「起業家になりたい」、「自分の力で道を切り開ける人になりたい」と考える新卒・第二新卒を対象に、個人の能力を高める新しいキャリア「VENTURE FOR JAPAN」を開始。

2019年には、フォーブスジャパン「日本のインパクト・アントレプレナー35」に選出される。


地方で抱えている課題は、

日本がこれから向き合う課題であり、世界の先進国がこれから向き合う課題である

小松氏「人口減少、高齢化、教育格差、資源管理、労働力不足、税収減など、地方が抱える課題に向き合うことは、日本や世界の先進国が抱える社会課題を先取りしているとも言えます。地方で事業をやることは日本の社会を良くすることだけでなく、世界を変えていくことに繋がります。皆さんがこの課題に向き合うことは本当に尊いことだなと感じます。」

「コレクティブインパクト」を起こしていくために必要なのは「トライセクターリーダー」

小松氏「行政と民間と非営利、それぞれがもつリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)をシェアして一緒に社会課題を解決する流れになってきています。このような考え方をコレクティブインパクトといいます。この時に必要なのがトライセクターリーダーです」

女川町で震災後に行政、企業、住民と一緒になった復興まちづくりに従事した小松先生より、企業と行政が連携した街づくりを行う「トライセクター戦略」について、2コマを利用してご講演頂きました。

・受講生の声

〇社会人
今回の講義を受け、起業ってちょっとハードルが高いところがあるかな、という印象は受けました。ただ、起業だけではなくて会社の組織の中でも適用できることがあるな、と思える内容でした。
普段の生活では関わる機会のない人たちとリアルで関われるというのは、リモートでは考えられないメリットだと思います。

〇社会人
白根先生の講義で抽象的な内容を聞いた後に、小松先生の講義で具体的な内容を聞くことができて、自分が事業を起こす上で考える手段が一筋になって分かりやすかったです。今日ここに来るまで、チームの中で意見を出し合っていてもまとまりがなく、どう事業に落とし込んでいくかというのが、全然見えてなかったんですよ。それが、今日の講義で案出しや課題発見に関しても、すごく分かりやすくなったので、またチーム内で話し合いたいと思います。

〇学生
今日の授業は、マーケティングや、トライセクター戦略など、普通の学校生活ではどうやっても手に入れられない情報を生で聞くことができたので、すごく刺激的でした。
「大学卒業後は地元に戻って起業出来たらいいな」となんとなく思っていたものが、より一層その想いが強まりました。

3. 7月の講義スケジュール

7月の講義は、ゲスト講師より、ソーシャルイノベーションの創り方について学び、7月の後半ではいよいよ最上地方を対象にしたフィールドワークがあります。

7月8日

  • 5-1:VFAプログラム:プロダクトアウトとマーケットイン 講師:菅生 達仁氏
  • 5-2:ソーシャルイノベーションの創り方 講師:渡辺 広之 氏
  • 5-3:チーム・ワーク④(フィールドワーク準備) 講師:菅生 達仁氏、小野寺 忠司氏、廣川 克也氏、戸田 達昭氏

7月22, 23日

  • 6-1:フィールドワーク@最上地区 現地視察&ビジネスアイデア創出ワークショップ 講師:小野寺 忠司氏、菅生 達仁氏、廣川 克也氏、戸田 達昭氏、小松 洋介氏

4.まとめ

本記事では、「山形大学人材育成プログラム「i-HOPE 」2023 新事業創出イノベーションプログラム」の第三回、第四回の講義内容をお伝えしました。

7月はいよいよフィールドワークです。

これまでの講義で学んだ、インタビューのコツや、ビジネスモデルの作り方などの学びを活かし、自分達だからこそ考えられるビジネスプランを構築してみてください。

また、受講生の中にはフィールドワークの対象地域の最上地域に初めて行く方もいらっしゃると思います。
是非、自分の五感で最上地域を体感してみてください。

きっと素敵な気づきがあることでしょう。